ゆうき「あの、すいません」
机の前に座ってこちらに背を向けている女性に、声をかける。
女性は、背もたれに体重をかけた状態でクルリと椅子を回し、半身をぼくに向けてきた。
???「……なにか、あったのか?」
あれ? 白衣から保健の先生だと思っていたけど、振り返った女性はそうは見えなかった。
背が低め、というのは個人差だし、それでもぼくより若干高そうだから置いておくとして。
とにかく、基本的な顔立ちが若過ぎた。
整ってはいるけど、どこか人形のように平坦な印象を受ける。
肌は一度も太陽の光を受けた事がないかのような、抜けるような白さで、これもどこか作り物臭い。
メガネの下に覗く、感情を感じさせない落ち着いた眼差しは、その実年齢の推定を困難にする。
……多分、ぼくと同年代かなあ。
というか、白衣の下に制服を着ていた。
これが同年代じゃなかったら、色々と痛すぎると思う。
いやたとえ同年代でも、白衣と制服を組み合わせること自体がヘンだけど……。
ゆうき「ええと……、ここはどこですか?」
彼女は手に持つ本に視線を下ろしたまま、ぼくには目を向けず口だけ動かした。
???「『ここ』という指示代名詞が示す範囲が限定できないので、正確な答えを返すのは難しい」
ゆうき「え?」
???「まさか、『地球』という答えを期待してる訳でもないのだろう?」
ゆうき「は?」