瑠璃「天野おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!」
ドガシャアアッ!
蹴り足が、一瞬前までぼくの顔面が存在した位置に、まっすぐ打ち込まれた。
顔を横にズラすのがあと一瞬でも遅れてたら、直撃を受けてただろう。
結果としてコンクリート塀に打ち込まれた足の裏には、結構な量、ぼくの髪の毛が巻き込まれて踏まれている。
いやむしろ蹴り足がかすった耳たぶの方が、摩擦熱で焦げてる感じがして気になるかも。
瑠璃「……かわしたか。やるな」
腰を抜かしてコンクリ塀を背にヘタり込んでいるぼくを見下ろし、憮然として呟く。
ゆうき「い、いや、あの……」
ぼくはヘタり込んだまま、コンクリートのヒビが入っている場所を、横目で眺める。
ビシビシっ、と音を立てて、広がる亀裂。
その亀裂がある程度まで広がった時——ガラガラと音を立てて、コンクリートの塀は崩落した。
う゛ぞっ。
ゆうき「あ、あ……」
あまりのことに口がパクパクと虚しく動くだけで、言葉が出てこない。
ヒュウウウ……
残骸の上を、虚しく風が吹きぬけた。