両学園の学食、どちらが美味しいか。
そんな事で、七夏ちゃんと才華さんが言い争っていると
???「……でしたら、両学園の代表者同士での料理対決、というのはいかがでしょう?」
才華さんの車の後部座席から、ひとつの人影がゆっくりと降りてくる。
和服の凄く似合った、シットリとした色気のある女性だった。
車から降りる仕草も、着物に合わせて歩幅は小さいのに滑らかな動きで、ごく自然なしなやかさを感じさせられる。
大人の女性としての落ち着いた魅力が、全身から醸し出されていた。
才華「お、お母さま……っ!?」
才華さんから『お母さま』と呼ばれるって事は??
瑠璃「あれが理事長か……。初めて見たぞ」
隣に立つ瑠璃ちゃんの呟きは、ぼくの思いの代弁でもあった。
理事長さんなんて、そうそう顔を合わせる人じゃないけど。その数々の逸話だけは、東西栄峰学園生の間では広く知れ渡っていた。
いわく、分裂後も運営難を続けていた両学園の経営権を、十年前にポケットマネーで買い取った、とか。
橘グループの社長夫人であり、両学園の理事長は道楽で勤めているようなものだと、もっぱらのウワサだ。
他にも色々とウワサのタネになっている、謎の多い人だ。
けどそういう先入観は抜きにして??
ゆうき「凄く綺麗な人だよね……」
我知らず、呟いていた。
娘の才華さんも美人だから、当然かもしれないけど。
でも才華さんの母親なら年齢も相応のはずなのに、全然そんな風には見えない若さだし。
それで大人の色気というか、そういう年齢によるプラス要素だけは充足しているんだから。
七夏「う……。来てたんですか、凛花さん……」
凛花「……ふふっ。お久しぶりね、七夏ちゃん」
七夏ちゃんと知り合いらしく、挨拶をしている。
けどなにか、あの七夏ちゃんが気後れしているような……?