スペシャル

天野まみる編

メッセンジャーを使っての、お兄ちゃんとの毎日のやりとり。

この時が、一日でまみるの一番好きなひととき。

 

ゆうき のメッセージ  20XX/XX/XX 20:31:11

『まみる。ゲーム買ったんだけど、対戦しない?』

 

まみる のメッセージ  20XX/XX/XX 20:31:19

『格闘ゲームか〜。いいよ♪』

 

でも自分の得意ジャンルで攻めてくるとはね〜。

お兄ちゃんらしからぬ卑怯さ、気に入ったにゃっ。

 

『べ、別にそういうつもりはないよっ』

『そう?』

『初プレイ同士なんだし、そんなに差はつかないでしょ?』

『お兄ちゃんだけ、十字コントローラー持ちだけどね〜』

 

ま、その程度はハンデですむけどさ。

 

互いにPCにインストール、ネット対戦形式で勝負を開始。

 

まみるは、まみるに似たかわいい女の子キャラを選択。

お兄ちゃんは、ガタイのいい黒人ボクサーキャラを選択した。

 

でもお兄ちゃんの選択、背の低さへのコンプレックスが出てるよね〜。

 

『ヘンなこと考えてない、まみるっ?』

『な〜んにも〜?』

 

ラウンド、ワーン! ファイッ!

とりあえず、操作感に慣れないとね。

ジャンプの具合は、と。

——んみゃっ? なに、このふわふわ滞空時間の長いジャンプっ?

鬼のようにスキだらけっ。

 

もちろん、お兄ちゃんがそのスキを見逃すはずもなく。

バキィィィっ!

黒人ボクサーの強烈な大パンチが、まみるのキャラに炸裂する。

うにゃ〜っ! 一発で体力ゲージが4分の1吹っ飛んだ〜っ!

 

それでペースを乱してしまったのが悪かった。

このラウンドは終始押されっぱなし。

 

最後には、黒人ボクサーが乱打しながら突っ込んでくる超必殺技で決められてしまった。

 

『最初のスキは見逃してくれてもいいんじゃないっ?』

『手を抜くのも、まみるに失礼かと思って』

 

あ〜、そ〜。

そういうこと言うなら、まみるにも考えがあるにゃっ。

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