そして、何事もなく無事完成。
ふふぅ、自信作ですぅ。
「それじゃ瑠璃さま、どうぞぉ」
「うむ、いただこう」
「はい、たくさん食べてくださいねぇ」
「……ふむ、カツオブシがふりかけてあるのか」
お箸を構えている姿も、サマになっています。
皆がフォークを手に持つ中ですけどね。
箸でスパゲッティをつまみあげ、おソバさながらにズルズルとすすりあげていきます。
……あぁ、瑠璃さまって本当に男らしくて格好いいですよねぇ。
「ん、うまい」
その賛辞だけで、もうクラクラですぅ。
「醤油味が下地になっているのか」
「あ、はいそうですよぉ」
「南蛮の食材と思っていたが、純和風の味つけもあるわけだな」
「瑠璃さまは、和風の味つけが好みでしょうからぁ」
「さすが風鳥だ。私の料理は、そういう心遣いに欠けるのがいかんな」
「いえ、瑠璃さまが作って下さった料理でしたら、私にはそれだけで最高ですぅ」
「そうか? それでは、食べてくれ」
赤いスパゲッティの載ったお皿が差し出されました。
「……て、赤ぁ?」
また目をパチクリさせて、
「あの、瑠璃さまぁ」
「どうした、風鳥」
「トマトソース、使われましたぁ?」
「いや、使っていないぞ」
「……赤い、ですけどぉ」
「ああ、トウガラシを使ったからな」
「…………」
赤いんです。
麺そのものが、ナポリタン並に赤いんです。
むしろ、灼熱の炎なみの赤さというべきでしょうか。
スパゲッティから、熱が湧き上がっているような錯覚がしてきます。
事実、フォークを持つ手が熱を受けて大量の汗をかいています。
「あ、愛ですぅ……。愛さえあれば、どんな困難も乗り越えられるはず……」
「ん?」
「えぇ?いぃっ!」
意を決し、気合いの声をあげてフォークに麺を巻きつけます。
そのままの勢いで、口にくわえました。
「????っ!」
……………………
その後なにが起こったのか、私、風鳥香織は覚えていません……。