スペシャル

橘才華編

○月※日 晴れ

 

今日の祝日は習い事もなく、一日フリーでした。

前から気になっていた映画を、お忍びで見に行きました。

 

映画のタイトルは、『1001匹のニャンちゃんまっしぐら』。

 

と言いますか、なんですのあの猫たちの異常なまでの愛くるしさはっ? はあぁ……、思い出しただけでたまりませんわぁ。

ブチ猫のアレクサンダーの、小さい身体で頑張ってる感は本当にかわいいですわよねっ。黒猫のエリザベートの、気位が高いのに懐くとノドを鳴らしてスリ寄ってくる所など最高ですっ。三毛猫のミッシェルの子猫ならではのかわいさは、もう反則級でしたわっ。はぁ、抱き締めて頬をスリスリしたりしたらどんなに至福でしょうっ。ミルクをぴちゃぴちゃ飲んでいる姿を日がな一日ずっと観察していたいですわぁっ。

今度の休日に、どこかのペットショップに猫を買いに行きましょうかしらっ。

 

……落ち着きましょう。

 

今回は猫の映画でしたから頭が猫で固まってしまいましたけれど、猫だけでなく犬もかわいいですわよねっ。最近は小さくかわいらしい室内犬もよりどりみどりですし。

トイ・プードルのもふもふした毛をぎゅっと抱き締めたらどんなに気持ち良いでしょう。ミニチュア・ダックスフンドに元気良く駆け寄られて顔を舐めてもらったりしたらもう、わたくし……っ。パピヨンの、その名の通り蝶の羽のように広がった大きな耳をふにふにイジるのはきっと凄く楽しいでしょうし……っ。

肉球……、はぁ、肉球をぷにぷにしたいですわぁ……っ。

 

……落ち着きましょう。

 

犬猫以外にもかわいい動物はたくさんいますものねっ。

ハムスターなんかはどうでしょう? 手ずから渡したヒマワリの種をカリカリとほおばりながら食べていただけたら、きっともうたまりませんわっ。はぁはぁ……っ。

手乗りザルなんかもいいですわよねっ。手に乗るようなちみっちゃいおサルさんが「キキッ」とか鳴きながらこちらに懐いてくださいますのよっ?これが最高でなくて一体なにが最高だというのでしょうかっ。

ウサギさんなんか、意外に狙い目かもしれませんわ。ああ、白いふわふわの毛……♪ つぶらな赤い瞳……♪ ピンとまっすぐ立った、愛くるしい両の耳……♪

 

------------------------------------------------------------------

 

「……あら。今日の才華ちゃんは、日記をたくさん書いているのね」

 

いきなり後ろから声をかけられて、わたくしは大慌てで振り向きました。

そこにはやはりというか、お母さまの姿が……。

 

「ひ、ひ、人の日記を勝手に覗かないでくださいっ」

「……ごめんなさい。でも才華ちゃん、全然お母さんに気づいてくれないから。その集中力はお父さん似なのかしらね」

 

それはわたくしの問題ではなく、お母さまの気配の消し方が完璧すぎるせいです。

 

「……それに、最後をチラっと見ただけだから。才華ちゃんはウサギさんが好きなのね」

「い、いけませんかっ?」

「……いえ? お母さんも好きよ、ウサギさん」

「え? ほ、本当ですかっ?」

「……ええ。だから、才華ちゃんがそんなに買いたいなら、止めはしないわ」

 

お母さまの思わぬ言葉に、わたくしの声は期待で上ずっていたと思います

そして、

 

「……でも才華ちゃん、ウサギのさばき方って知ってるのかしら?」

 

お母さまはそんな言葉を残して、いつも通りの微笑をたたえたまま、部屋から出ていきました。

 

……………………。

 

ペット購入計画は、無期延期といたしましょう……。

前に戻る ショートストーリートップへ