スペシャル

加納りんご編

こんな夢を見ました。

 

わたくし加納リンゴは、気がつくと川原に倒れていました。

 

キョロキョロと辺りを見回します。

川の方に、小さな渡し舟が止まっていました。

船に乗っているのは船頭さんらしき人。

 

……て、あれは西学の光原零子さんじゃないでしょかー?

 

「どしましたー、光原さん?」

「人違いではないかな」

「へ? そなんですかー?」

「うん、ボクは名もなき三途の川の渡し守だ」

 

三途の川ってゆーと、死後の世界に流れてるっていうアレですよね。

…………。

——臨死体験っ!?

 

「夢って話じゃなかったんですかーっ!?」

「言っている事の意味が分からない」

「そう言われると自分でも良く分かりませんがっ!」

 

我ながら、いきなりの事態にテンパってしまってます。

 

「だってそんな死ぬような目にあった記憶ないですよーっ?」

「なにかの事故で即死したんだろう。苦しまずに死ねたのなら、運が良かった」

「そんなバカなーっ!」

「諦めてもらわないと、ボクとしては困る」

 

光原さん似の渡し守さんは、冷淡に言ってきます。

 

「こ、これからわたくしはどうなるんでしょかっ!?」

「この船に乗って川を渡り、閻魔大王の所に言ってもらう」

「そ、それでっ?」

「そこで天国行きか地獄行きかの裁きを受けるのだけれど——」

「だけれどっ?」

「その前に、ウソをついた事のある人間は舌を抜かれてしまうらしい」

「はあっ!」

 

大慌てで自分の口を押さえて首を振りました。

 

「ダメですダメですっ!」

「ウソをついた事がなければ、大丈夫だ」

「そんな人間いるわけないじゃないですかーっ!」

「ふむ。そういう話は聞かないでもない」

「舌を抜くなんてわたくし加納リンゴに死ねと言ってるようなものですよーっ!?」

「ここにいる以上、キミはすでに死んでいるのだけれど」

「はあっ!」

「では問題ないな。乗ってくれ」

 

フシギな事に、身体が勝手に動いて船に乗ってしまいます。

あああっ、このまま川を渡ったらきっと二度と現世に戻れませんっ。

 

誰かプリーズヘルプミー!

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