スペシャル

加納りんご編

「——とゆー所で家のベッドで目が覚めたんですよっ」

「て、ほんとにただの夢の話っ?」

「最初にそう断ったじゃないですかっ」

 

東学の食堂。

わたくしは、たまたま会った守宮七夏さんと雑談していました。

でもなんか七夏さんは不満そうです。

 

「でもほんとに怖かったんですよっ」

「へー」

「目が覚めた時はもー全身汗がびっしょりでっ」

「ほー」

「怖いですよねっ。恐ろしいですよねっ。恐ろしいですよねっ。怖いですよねっ」

「いや、リンゴちゃんの語り口だとあんまり」

「むむむ、七夏さんの評価は厳しいですっ」

「なに? 怖がらせたかったの?」

「それはもうっ。アナウンサー志望としてはあらゆる語り能力を手に入れないとっ」

「まあ何事も修行の内、ぐらいの考え方は必要だろうけど」

「目指せ第二の稲川○二っ! 真夏を涼む怪談ストーリテラー代表の座を我が手にっ!」

 

ぐっ、と拳を握り締めます。

すると七夏さんがツッコんできました。

 

「でも、今のままじゃ難しいんじゃない?」

「ふむむっ。どすればいいんでしょかっ?」

「怪談にしたいなら、もっと語り口から考えないとダメよ」

「語り口ですかー」

「おどろおどろしさとか、不気味さとかを演出する口調や言い回しってあるでしょ?」

 

さすがは七夏さんっ。アドバイスが的確で分かりやすいです。

 

「あと、今みたいなネタの場合さ」

「はいっ、なんでしょかっ?」

「オチでは、夢か臨死体験かハッキリしない、とかにするのが王道じゃないかしら」

「具体的にはどうすればいいんですかねっ?」

「車にハネられて気絶してた間に見た夢、て話にするとかさ」

「なるほどっ? 起きて最初に目に入ったのは病院の天井だったとかいうパターンですねっ」

「そうそう」

「なるほどなるほどっ。という事は——」

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