スペシャル

守宮七夏編

今度は、階段の半ばあたりで追いつめられた。
「会長がいたぞーっ!」
「今度こそ逃がすなーっ!」

階段の上と下から、学園生が迫ってくる。
守宮七夏、三度目の大ピーンチっ。
上下から、伸ばされた手があたしに差し迫る。
あたしは手が触れる直前、身体をスッと横にズラす。

「ほいっとっ」
紙一重で、階段の手すりに手をかけ、ジャンプっ。
人の山を華麗に飛び越え、一階廊下に着地っ。
ドガゲションッ! と、楽しい音を立てて、上下から押しかけていた学園生たちは激しくぶつかりあった。
「ぐわああぁっ! 崩れるぅぅぅっ!」
「耐えろぉっ! ここで崩れたら、押し潰されて死ぬぞぉぉっ!」
「ま〜、頑張って〜」
あたしは無責任な声援を残して、その場を駆け去った。

そんなピンチを十回ぐらい切り抜けた頃、
『はいっ! 時間でーすっ! 大会しゅうりょーっ!』
『どうやら七夏さんの快勝の模様ーっ! 我らが生徒会長恐るべしっ!』
リンゴちゃんの放送が響きわたる中、
「はっはっは〜。ざっとこんなものかしら」
死屍累々と倒れた東学生たちを見下ろし、高笑い。
「もう少しぐらいだったら続行してあげていいけど〜?」
「……もう、カンベンして下さい……」
倒れ伏した東学生のひとりが小さな白旗を上げ、大会は完全に終結した。

——で、その後の結果を言えば。
大会が終わってから、廊下を走る学園生の姿はまったく見なくなった。
そしてあたしは、ゆうと生徒会室でダベり中。
「でも、みんな良くあんな約束ちゃんと守ってるよね」
「ああ……、それ、約束守ってってだけじゃないわよ?」
「え、そうなの?」
あたしは軽く頷く。
「ほら。大会中、みんなぶつかりまくってたでしょ?」
「あ……、ああ」
「それで廊下を走っちゃキケンだって、身体で覚えちゃったってこと」
「……また、過激な解決法だよねえ」
「い〜の、い〜の」
手をパタパタと振り、
「みんな元気ありあまってるんだから、それくらい大丈夫だって」
「まあ、そうかな」 と、ゆうにも納得してもらえた事で。
さて、やるべき事はあと一つ……。
「それじゃゆうっ! 一週間以内に絵心を極めるから、絵画教室通いに付き合いなさいっ!」
「ご、ごめんってば、七夏ちゃんっ」

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