そうして風鳥と別れ、帰宅。自室に戻る。
必要最低限の家具しか置いていない部屋のスミに、目を向ける。
そこには、クマがいた。
正確には、クマの形をしたハリボテだが。
ハリボテは、精巧な作りをしている。
その、肉厚な体躯。
触れるものすべてを切り裂くような鋭い爪。
牙を剥いた獰猛な顔つき。
今にも、こちらに襲いかかってきそうな雰囲気だ。
こんなものを相手にしていると知られたら、女らしくないと思われてしまいそうなものだが。
やはり、風鳥は良い友だ。
そして私は、気合いを込めてハリボテに蹴りを叩き込む。
「以前は引き分けたが、次会った時はそうはいかんぞっ!」
蹴りを受けたハリボテは吹っ飛び、部屋の壁に何度か跳ね返った。